日医総研とその役割

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天野医院 天野教之
tosan@morimori.or.jp
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天野@埼玉和光市天野医院です。

昨日、埼玉県医師会情報広報委員会におきまして日医総研の主席研究員のN先生と主任研究員のM先生の講演会が開催されました。その内容がとても面白かったものですから、みなさまにもお伝えしたいと思い、レポートします。
なお、一応、秘密に属する事項もあるかと思って、N先生、M先生の校閲を頂きましたが、問題ないうことで、皆様にお伝えしたいと思います。何回かにわけて投稿しますので、よろしく。

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N先生の講演のまとめ その1

日医総研 開設以来3年半
 現在50人規模・・・卵型構造
 黄身:常勤・・・25名
 白身:週の半分出勤・・・10名
 殻:非常勤・・・10名
 +アルバイト

日医総研出自の秘密。
 某民間会社マルチメディア開発室長のサラリーマンだったN氏に、日本医師会のT氏からいきなり「帝国ホテルで飯を食うぞ」との電話。T氏が常任理事時代にN氏はT氏と激論を交わした事がある。で、出向いたところ、三顧の礼とはほど遠く、「シンクタンクを作るが、お前、やりたいなら拾ってやってもいいぞ」。N氏は大いに迷ったが、自身、チャレンジするために日医総研に移籍した。

現在、日医総研には他の総研からの移籍希望者が殺到しているとの事である。

日医総研の三段階
第一段階:厚生省の政策誘導的データについてのチェック
  データの解釈について検討、参照薬価制度、一部薬剤費負担の矛盾についてレポート
  しかし第一段階では大局を見る目が不足していた。
第二段階:将来ビジョン作りの必要性を痛感し、大局的なモノの見方に移行。
  批判はあろうが、それなりのビジョンを提案できた。
第三段階:自前データベースの構築
  厚生省、その他から出てくるデータでモノを言っていくのは困難。
  自前のデータで厚生省その他に対して、対案を出していく。

現在この第三段階である。このデータベースを構築するために実験的事業として財務評価システムを運用して現在50無床診療所で運営している。まもなく1000の医療機関を統計的に意味があるように選び、運用開始する予定である。1000の医療機関からデータが集まれば、医療費改定の影響、医療機関の経営状態等から、中医協に対してキチンとした事を主張できる。

ITの医療への影響
 ITによる医療技術の進歩が起こる。具体的にはヒトゲノムの解明はITがなければ不可能であったし、今後は、ヒトゲノム解明により、医療技術の飛躍的進歩が見込まれる。技術進歩は必ず医療費上昇を来す。この医療費上昇は市場原理では動かない。医療効果が頭打ちになるまで医療費は上昇を来す。つまり、急速な技術革新が起こると、公的保険制度を維持できなくなる可能性がある。

 年金の運用は財政投融資によって公的法人で行われている。しかし、この公的法人では資金を適正に運用されているかどうか監査が充分に行われているとは言い難い。この部分が不良債権化する可能性がある。現在医療費に一〇兆円の公費が流入しているが、この部分も無くなる可能性もある。その場合に保険制度は維持できない。

 以上の点から日医総研では自立投資という新しい財源の考え方を提案した。

現状の医療機関を取り巻く現状
医療費の増大が叫ばれるが、どこへお金が行っているのか?
製薬メーカーは増収増益である。R幅の減少はすべて製薬メーカーに流れている。そして卸は無借金経営であるが、医療機関からの資金回収は三−四ヶ月なのに対して、メーカーへの支払いは六ヶ月平均である。つまりメーカーが金融機関機能を担っている。このため卸をメーカーが支配する構図になっている。

政管健保には、健康勘定の単年度収支とその他の収支、業務勘定とがある。そして公表されているのは健康勘定の単年度収支の部分だけであって、この部分が赤字になっているという。しかし、単年度収支のその他の部分と業務勘定は黒字であり、政管健保全体の勘定では赤字ではない。

健保組合には3兆5千億円もの剰余金がたまっている。

国保の赤字は1000億と言われているが、七〇〇〇億にものぼる未収金が発生している。医療機関に経営努力を求めるまえに未収金回
収の努力が必要ではないか。

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M主任研究員の講演から

二〇一五年の診療所の姿
 朝起きてから夜寝るまで・・・ハイテク機器を駆使した診療。
かかりつけの患者さんをきっちりと把握し、必要な患者さんに十分な時間をかけた診療をする。夢のような話でしたが、あながち夢ではないと思われました。この「紙芝居」は、Mさんがインターネット上で今後公開されていくと思われます。乞うご期待。

財務評価システム。 
 財務データを集める事により、現状の把握と分析・評価を行う。
 その評価を元に医療機関のあるべき姿、国民医療のあるべき姿を政策として提言していく。このデータは、「自前」のデータで あり、この研究は非常に重要な位置付けである。

経営管理の必要性
 医療機関は営利機関でないが、利益が必要。それは再生産の費用 としてであって、利益をためて、次の投資(医療器具、設備の更新)をして行かなければいけない。通常の企業会計では経常利益は配当金と再生産費用とにまわる。
 ライフライン産業の場合には、電力会社だと社員一人あたりで290万円の再生産費用をとっている。ライフライン産業で少ないところのJRでさえ130万円をとっている。しかしライフライン産業が人件費を抑制して再生産費用をひねり出しているわけではない。全国平均の給与よりもライフライン産業の方が給与が高い。(病院は全国平均より低い)。JRと同じレベルの再生産費用を考えると、常勤者五人の診療所では130万円×5で年間650万円の再生産費用を見込むべきである。 中医協実態調査では2414万円の個人一般診療所経営者の収入になるが、この2414万円から650万円の再生産費用をひいて考える事が必要である。
 このレベルで考えると一般企業の社長の年収と比べて一般無床診療所経営者ははるかにすくないレベルの収入となる。これが適正な収入といえるかどうか・・・。

薬価が下がっているにも関わらず、製薬メーカーは増益である。三〇兆円医療費の中で大手製薬メーカー14社の売上高は4.8兆円。しかもR幅の低下と反比例して経常利益は増加し9000億円にまでふくらんでいる。医薬品卸はR幅の影響で減益となっている。売上高経常利益率でみると、他の業界では製造メーカーが3.3%に対して、卸、小売りが1.3%となっている。それに対して、医薬品業界ではメーカーが18.4%の利益を上げているのに対して、大手卸でさえ1.3%しか利益が確保されていない。いかに不均衡か・・・医薬品メーカーは海外展開を進めて経常利益を上げているというが、実質的に海外売上高が増えているのはT社一社だけである。

健康保険財務のカラクリ
マスコミで公表されている利益と、企業会計で組替えてみたときの利益には、以下のようなギャップがある。

      マスコミ発表    企業会計での見直し
政管健保   △950億円       667億円
健保組合   △17億円       1010億円
国保     △1020億円       889億円

一部分のみしか公表されず、しかも現金の収支しか表されていないので、本当は黒字だということが見えなくなっているのだ。このようにして、健保組合では3.5兆円もの財産を積み上げるに至っている。