訳のわからない病気について
精神分裂病の患者さんと御家族に対する御説明です。
長文ですが、以下のように御説明して、薬を飲んでいただいております。
そして、ある程度病識が出てきて、薬の服用にも馴れて、信頼関係が出来ましたら
病名告知をしていますが、病名よりもその内容が重要だと考えています。
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       鶴井医院    高岸 泰
E-mail  tsurui01@cityfujisawa.ne.jp
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訳のわからない病気についてお話ししようと思います。

世の中にはまだまだ訳のわからない病気が沢山あります。
その中でも、代表的な病気と思いますが、これからお話しいたします。

我々人間の頭は大部分が脳によって占められています。
脳は一種のコンピュータのような物と考えてください。ここでは多くの情報が適切に処理
されています。その中で、物を考える筋道という物が想定できます。
例えば、一足す一は二であります。二足す三は五ですね。これは例えですが、我々は
一足す一は二、三足す四は七、と言う世界に住んでいます。
これは我々が幼い頃から、それが正しい答えであると信じて造り上げてきた思考回路で
あります。そして多くの人がこのことに関しては納得してくれる判断なのです。
一種の常識と言いますか。コンセンサスとでも言うものでしょうね。

この思考回路は絶縁体のようなカバーで覆われていて、滅多なことではショートしません。
ところが、ある年齢に達すると物の考えの筋道がショートしてしまうような、そのような病気が
あるんです。思考回路の絶縁体が薄くなってきて他の回路に入り込んでしまうようなんです。
普通、電気がショートするとすべては止まってしまうのですが、これは違います。思考回路が
ショートしますと、本来流れてゆくはずの回路から違う回路に入っていってしまうんです。
例えば、一足す一が三になったり、二足す四が八になったりしはじめます。一足す一は二、
の回路がショートして三という答えを出してしまうんですね。これは困ります。
こうなりますと我々、二足す二は四という世界に住んでいる者とは話が違ってきてしまいます。
なにが本当なのかさえわからなくなってしまい、混乱してきてしまいます。

誰もいないのに自分に話しかけてくる、あるいは命令してくる声が聞こえてきたり、
人が自分のことをあれこれ中傷していたり、誰かが絶えず自分のことを見張っていたり、
自分の考えがそのまま人に筒抜けになっていたり、インターネットで自分のことを
みんなが言っていたり、部屋の天井に盗聴器が仕掛けられているに違いないと考えて
しまったりと言うことになるんです。これは困ります。
自分はなにで、どうしたら良いかがわからなくなってしまいます。自分の境界が不鮮明に
なってしまうんです。
こうなってきますと、この病気にかかっている人の認識している現実と我々の認識している
現実の間にはどんどん開きがでてきてしまいます。とても困ることになるんです。
世の中にはこういう病気があるのだと言うことを是非頭に入れておいて下さい。

でも、最近ではとても良い薬が出来てきました。
薬で治療できるようになってきたのです。この治療薬を飲みますと、あたかもスプレーで
絶縁体を吹き付けるように、思考回路のショートをくい止めてくれるんです。
そうすると思考回路の流れが整って、一足す二は三、の世界に戻ってきてくれるわけです。
これはご本人にとっても同じ世界に住んでいる我々にとってもとても助かります。

一昔前まではこの絶縁体だけを厚くしてくれるような薬がありませんでしたので
脳の働き全体を押さえてしまうような薬で治療していました。
そうしますと寝てしまったり、やたらにボーッとしてしまったり、表情が無くなって動きが
止まってしまったり、涎が流れ出たりと副作用ばかりが目立ってしまうような状態でした。
薬によっては副作用で、身体の動きが不自由になって、ギクシャクしたり、居ても立っても
いられなくなったり、舌が口から突き出てしまったり、目が上を向きっぱなしになって
しまったりしたこともありました。
もっと昔は精神病院に入院させて、ただ経過を観察していた時代もあります。

でも、今は違います。治療も日進月歩です。
早期発見・早期治療で我々の住んでいる世界からそんなに離れてしまわないうちに
ちゃんと引き戻せるような治療が出来るようになりました。
これは素晴らしいことです。治療の可能性がグンと膨らんできたわけですから。
何とかちゃんと治療して、患者さんの情報処理システムの錯誤・漏出を防止して、
同じコンセンサスの世の中で一緒に生活して行けるよう努力して行こうではありませんか。
これはとりもなおさず患者さんのアイデンティティーを守ることになります。

ここの所がよく御納得いただけましたら
このお薬を一週間服用してみて下さい。と言うことで、
ルーラン(4)2T 朝食後一錠、寝る前に一錠、きちんと服用してみて下さい。

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関連サイト (安藤@荒川医院)